国立大学法人 京都工芸繊維大学 森迫清貴 学長(以下、京都工芸繊維大学)とサムコ株式会社 代表取締役会長 兼 CEOの辻理(以下、サムコ辻理)は、日本の材料科学の発展、企業の研究者・技術者の育成およびグローバルな産業競争力の強化を目的として、材料科学分野の後期博士課程の研究者を育成するサムコ辻理寄附講座「先端材料科学講座」を京都工芸繊維大学にて2022年4月に開講することに、合意いたしました。
記者発表時の写真(2021/11/11、京都経済センター(下京区)3Fにて)
近年、日本の高度で専門性の高い科学技術教育の停滞が懸念され、高度な技術を要する後期博士課程への進学者数は減少の一途を辿っています。大学院の修士課程から博士課程への進学者は、ピークだった2003年度の約1万2,000人から、2019年度は約6,000人と半減しています(『読売新聞』2021.10.30朝刊37面)。また、人生100年時代において、リカレント教育またはリスキリングによる学び直しは企業の人材育成および高度技術人材確保の重要なテーマとなりつつあります。
京都工芸繊維大学とサムコ辻理は、これらの課題について意見交換を重ね、今回のサムコ辻理寄附講座を開講するにいたりました。本講座の特色は次の3点です。
1. 日本の材料科学(例えば、半導体、電子材料、環境、ライフサイエンスなど)の発展とグローバルな産業競争力の向上
日本の強みである材料科学の分野において産業界と学界から最先端の講師陣を招聘し、材料科学分野の企業人ドクター育成を目指します。また、グローバルな競争において活躍できる人材を育成するため、海外の主要な大学・研究所との人材交流や派遣を行うとともに、英語論文の執筆発表に重点をおきます。
2. 45歳前後のベテラン社員の再教育
人生100年時代の折り返し点に差し掛かる45歳前後の企業内技術者を対象としています。企業での経験を十分に積んだ研究者・技術者が、より高度な専門的知識・技能を取得する再教育プログラムを実施します。個人の力で45歳以降のキャリアプランを作ることは、たやすいことではないため、大学として企業として、個人の学び直しをサポートします。企業にとっては長期的に活躍が期待できる社員の育成となり、大学にとっては、研究が加速することと専門性の高い企業人ドクターを輩出することができ、双方にとって大きなメリットがあります。
3. 京都工芸繊維大学のグローバルなプレゼンス向上に期待
企業の経営者および技術者の視点から見て、京都工芸繊維大学は、材料化学系、分子化学系、電気電子工学系などの材料科学分野での基礎研究および応用研究に関する優れた研究業績および人材を有しています。総合大学としての京都大学と工科大学としての京都工芸繊維大学の関係は、京都とよく似た都市背景を持つボストンにおけるハーバード大学とMIT(Massachusetts Institute of Technology: マサチューセッツ工科大学)の2校に代表される関係と類似しています。産業界の人間として私(サムコ辻理)は、京都工芸繊維大学が材料科学の分野で「日本のMIT」のような存在になることを期待しています。その点において企業側もおおいに協力していきたいと考えています。
今後、京都工芸繊維大学とサムコ辻理は、材料科学の基礎分野で高い専門性を有する大学側の講師陣と、最先端分野で実務に携わる企業講師陣と、学生が、講座を通じて学びあい、新たな人的ネットワークの構築につなげることで、日本におけるリスキリング講座の模範となることを目指します。この講座が、企業人ドクターの育成・増加に結び付き、ひいては日本の産業全体の国際競争力向上に貢献することを目指します。
<お問い合わせ先>
サムコ株式会社
広報・IR室 土橋 篤志
TEL (075)621-7841
E-mail koho@samco.co.jp